1.　宅建士への変更で宅建試験は難しくなるという噂も一部にありますが…。

平成２７年４月１日から、宅地建物取引主任者は宅地建物取引士に変更になります。

参考ブログ内リンク ： 宅地建物取引主任者から宅地建物取引士への名称変更等

さて、取引士への変更になって、宅建試験が難しくなるのではないか、などという噂があります。

宅建試験の受験指導機関（予備校）などでも、「来年は変更になって難しくなるかもしれないから、今年頑張りましょう」みたいなことが書かれていたりします。

まあ、「今年頑張る！」ということは良いことなのですが、ちょっと煽ってんじゃないの？なんて思わなくもありません。

私としては、「来年からは難しくなるのか！」といたずらに不安を募らせさせるのはどうかな…と思います。

そこで、あくまでも私見ですが、本当に難易度があがるのかどうか、簡単に予測してみようと思います。

2.　既存の宅地建物取引主任者も宅地建物取引士になるのですからね…

今のところ、宅地建物取引士への名称変更とともに明らかになっていることと言えば、

・　宅地建物取引士の業務処理の原則を定めた。

・　宅地建物取引士の信用失墜行為の禁止。

・　宅地建物取引士の知識及び能力の維持向上。

・　宅地建物取引業者による従業者の教育。

・　免許等に係る欠格事由等の追加（暴力団員等）

というあたりなのですが、まだまだ漠然としていて良く分からないところも多いのが現実で、これだけではわかりません。

業界団体の意向などからは、宅地建物取引主任者の社会的地位の向上を、という感じのプッシュがあったようなのですが、そうであれば、今後の宅地建物取引士資格試験のみならず、既存の宅地建物取引主任者（つまり平成２７年４月１日からは自動的に宅地建物取引士に変わる人たち）の、能力やらモラルやらを向上させなければなりません。

しかし、例えば平成16年度から平成25年度までの１０年間の間だけでも、宅地建物取引主任者資格試験の合格者は３１６，５８９人。３０万人以上もいるわけです。

正確に言えば、この中には試験に合格しても主任者として登録しない人もいるのですが、いずれにしても非常に多くの人が既に宅地建物取引主任者になっているわけです。

過去に遡ればもっともっといっぱい。

この人たちに新たに試験などを義務付けて、「地位向上」に見合った実力をつけさせる、なんてことは正直不可能です。

実際、宅建協会などは、宅地建物取引士への変更に合わせて、「『不動産キャリアパーソン講座』を是非受講してください！」なんて言っており、修了試験に合格すると資格登録が出来たりもするんですが、内容は、なんというかいわゆる「研修講座」といった感じ。もちろん、有益な内容がしっかり入っているとは思うものの、それだけで「地位向上」と言えるほどの内容があるかはうーん…。ないでしょ…。

予測としては、資格の更新の際に義務付けられている「法定講習」の時間数が増えるとか、そんなことじゃないかなあ、と思ったりしています。

思うに、宅地建物取引主任者を宅地建物取引士に変更したとしても、既存の主任者だった人たちとの関係でいえば、そう大きな差を設けることは難しいのではないでしょうか。

とすれば、試験が難しくなる、という気はしないのですが…。

3.　合格率を下げるのも、出題を難化させることも考えにくい

「試験が難しくなる」という場合、

・　試験の出題内容が難しくなる

・　合格率が下がる

この２種類が考えられます。

（１）　合格率は下がるか？

受験者にダメージが大きいのはは、「合格率が下がる」ということでしょうね。

合格率が下がるということは、同じような難易度の問題であれば、ボーダーが上がる、ということですからね。

「合格率が下がる」＝「合格者数が減る」ということです。

しかし、ここ１０年間の合格者数の推移を見ても、３万人前後を行ったり来たりしていおり、例えば大きく減らして行こう、という意向を読み取ることはできません。

国家試験というのは、試験として公平に行われるべきものですが、それは同一試験を受験している受験者間の公平であって、違う年度で合格率を大きく変えたとしても不公平とまでは言えない、ということなのだと思いますが（実際には不満を感じるでしょうね…）、この合格率の増減＝合格者の増減は、いわば国策として決めていることだと思います。

つまり、その資格を保有する人材を、社会（というかその業界）にどれくらい供給すべきか、という政策判断があるのです。

しかし、宅地建物取引士（宅地建物取引主任者）について、有資格者の増減について何がしかの政策判断がされているという雰囲気はありません。

まあ、宅地建物取引士（宅地建物取引主任者）の資格があったからと言って、直ちに独立開業する人が激増するわけではないですし、不動産会社等で採用されるかどうかというフィルターがかかっているので、この資格について、人材供給の量について、例えば医療系の国家資格などとは違って、それほどシビアに考えられているわけではないのかも知れません。

そうすると、合格率を大幅に下げる＝合格者を大幅に減らす、ということが直ちに起こる気はしません。

（２）　試験の出題は難しくなるか？

試験の問題が難しくなる、というのはどうでしょう。

問題が難しくなっても、合格率が変わらなければ、全受験者の中での条件は同じなので、あまり神経質になる必要はないのかなあ、と思いますが、内容が今より難しくなるのは困るなあ、と思う人もおられるでしょうね。

しかし、これも私は「ない」と思います。

恐らく、多少出題内容に影響はあるかもしれません。取引士の業務処理の原則などについてもう少し詳細が詰められていけば、そういった部分からの出題はあり得るでしょう。

しかし例えば、権利関係、民法の分野での出題が「理解した上で覚えればよい」という今までの宅建の出題とは違って、「理解した上で、応用、類推して判断しなければ解けない」という類の問題に変わるなど、あまり想像はできません。

こんなことをすると、想定する受験者層が変わってしまい、それこそ激変です。

これほどの激変を起こすなら、主任者から取引士へ、という変更ではなく、既存の主任者は残した上で、上位資格を別個に設けるとうい話になるのではないでしょうか。

しかし現実は、既存の主任者はそのまま取引士にスライドすることになっています。

ですから、今までとはレベルの違う試験内容をクリアしなければならなくなる、ということも考えにくいと思います。

4.　結論（あくまで私見）

というわけで、私の個人的な意見としては、

宅地建物取引主任者が宅地建物取引士に変わったからといって、試験については大幅な変更は予測しにくい。
（多少の出題内容の追加はありえる）

というところです。

受験生としては、色々な情報に惑わされることなく、淡々と今までと変わらない受験対策をして頂くのが良いのでは、と思います。

あくまでも私見ですので、あしからず。

ＰＳ．後日、同じテーマで追加記事を書きました。とにかく今は気にしない方がいい、という内容です。

→　　　宅地建物取引士への変更で試験は難化するのかをもう少し考えてみる。

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