基本テキストと過去問題集というセットで勉強し、基本テキストに情報を集約して武器を１つにし、直前期はそれをひたすらまわす。

これが私のお勧めする勉強法です。

（参考までに私の使ったテキストはこちらの記事に → 宅建短期合格のためのテキスト選び）

この方法は、基本テキストが核になっており、過去問題集で補完するという方法ですが、「本当にそれだけで足りるのだろうか？」という不安を感じる方も多いだろうと思います。

そこで今日はひとつ、平成２６年度の本試験出題問題から、意外と受験生が苦しんだかも知れない問題（まだ受験生の正答率はわかりませんが…）だけれど、基本の勉強でなんとかなるのではないかと思われる問題について検証してみたいと思います。

1.　平成２６年度宅建試験本試験問題４１を題材にテキストと照合してみる。

次の問題を見てください。

【平成２６年度宅建本試験問題　４１】

次の記述のうち、宅地建物取引業法（以下この問において「法」という。）の規定によれば、正しいものはどれか。

１　　宅地建物取引業者が、他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を、案内所を設置して行う場合で、その案内所が専任の取引主任者を置くべき場所に該当しない場合は、当該案内所には、クーリング・オフ制度の適用がある旨を表示した標識を掲げなければならない。

２　　宅地建物取引業者が、その従業者をして宅地の売買の勧誘を行わせたが、相手方が明確に買う意思がない旨を表明した場合、別の従業者をして、再度同じ相手方に勧誘を行わせることは法に違反しない。

３　　宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地建物売買契約成立後、媒介を依頼した他の宅地建物取引業者へ報酬を支払うことを拒む行為は、不当な履行遅延（法第４４条）に該当する。

４　　宅地建物取引業者は、その事務所ごとに従業者名簿を備えなければならないが、退職した従業者に関する事項は従業者名簿への記載の対象ではない。

【答え】　１

では、順に選択肢を見ていきましょう。

＜選択肢　１＞　正しい気がするが不安…

この選択肢が正しく正解です。が、少し悩みますよね。

どのテキストにも、「事務所以外の場所の規制」の項目で、案内所等については、どこも「標識」が必要である旨が書いてあるはずです。

だから、標識が必要なことはわかるんだけども、その標識に「クーリング・オフ制度の適用がある旨」の表示が必要なんだろうか、というところです。

これについて、私の手元のテキストには、「クーリング・オフ制度」の説明のページにちゃんと載っていました。

ただ、本文ではなく、欄外の「プラスアルファの知識を得てね」という項目のところに小さな文字で書いてありました。

（尚、宅地建物取引業法施行規則および別記様式で、確かに標識には「クーリング・オフ制度の適用がある」という表示が入ってます）

でも、ここまで勉強できているかどうかは正直微妙ですよね…。欄外はすっ飛ばしがちな人も多いはず。

ですので、選択肢１を見た瞬間に「正しい！」と言える受験生はちょっと少なく、他の選択肢を見るまでは保留になるのではないか、と思います。

＜選択肢　２＞　誤りだとわかる

おそらく、この選択肢が誤りであることは多くの方が気付くでしょう。

根拠は、宅地建物取引業法施行規則第１６条の１２第１号のニ で、平成２３年に改正された内容ですが、テキストにも載っていたり、常識的にも「他の従業者に代われば問題ないはず」とは思わないでしょうから、問題なく誤りとわかるでしょう。

＜選択肢　３＞　誤りだとわかるはず

これは宅建業法４４条の「不当な履行遅延」に関する問題です。

テキストで言えば「業務に関する禁止事項」の項目に堂々と載っており、そこには、「宅建業者は、その業務に関してなすべき宅地・建物の登記・引渡し、または取引に係る対価の支払いを、不当に遅延する行為をしてはならない。」と書いてあります。

これを読むと、「不当な履行遅延」は、「登記」「引渡し」「対価の支払」に限定されているのですが、記憶があいまいだと、これらが限定列挙（これらに限って禁止しているのか）、例示列挙なのか（これらは禁止する行為の例なのか）、うーんどっちだっけ、ということになる可能性はありますね。

ただ、平成２４年度の本試験【問　４０】で、「不当な履行遅延の禁止（法第４４条）は、宅地若しくは建物の登記若しくは引渡し又は取引に係る対価の支払を対象とするのみである。」というものが出ており、これは正しい記述なのですが、この過去問を勉強する際に「のみ」という部分をしっかりおさえていれば、限定列挙であることがわかります。

さらに、選択肢では、媒介報酬、つまり媒介契約に基づく報酬支払について述べており、業法４４条が問題としている宅地建物の売買契約等の場面とは違うことがわかります。

この辺のことからなんとかこの選択肢が誤りだとわかるのではないでしょうか。

＜選択肢　４＞　誤りだとわかる

従業者名簿への記載事項として、「当該事務所の従業者でなくなったときはその年月日」を記載しなければならない、ということは、必ずテキストに書いてあります。

ただ、あまり目立たない扱いになっている場合もあり、これだけだと覚えていない人もいるかもしれませんね。

でも、テキストの本文にしっかり載っているはずです。

また、問題そのものとは直接関係ないものの、従業者名簿は最終の記載をした日から１０年間保管する義務がある、という知識は非常に重要なので覚えているはずです。

それで間接的な感じで、１０年間の保管義務の記憶から、それとセットで「ああ、辞めても長いこと名簿にのこるんだな」という印象ぐらいは覚えているのではないでしょうか（こういうイメージを持ちながら覚えることは重要です）。

さて、こうやって見ていくと、選択肢２・４が誤りだとういうことは、テキスト中心の勉強をしていればわかり、選択肢３もテキスト中心、できれば過去問をやっておくことで誤りだとわかります。

一方正解の選択肢１については、なかなか自信をもって正しいと言えないかも知れません。テキストには薄く書いてあるだけですし、過去問にも「クーリングオフに関する記載」が必要かどうかは出題されていないと思います（たぶん）。

ただ、他の選択肢２・３・４が誤りですから、消去法で１の正解にはなんとかたどり着けるのでは？

2． やはり基本テキストを徹底してやることが近道だと思う。

こうやってみていくと、選択肢２・３・４を「誤り」と見抜くためには、基本テキストに書いてある知識でも対応できることがわかります。

そして、過去問をやっていればなお自信を持ってこれらの選択肢が「誤り」だと言えます。

選択肢１については、基本テキスト・過去問をきっちりやっていても自信を持っては「正しい」というのは厳しいかも知れません。

しかし、試験問題に正答する、という意味では、誤った選択肢３つを消せれば何の問題もありません。

こういう問題を見ると、やはり必要なのは、基本テキストに書かれている内容を正確に穴なく覚えているかどうかであり、過去問をやっているかどうかは、それを補強する、という関係にあるのだ、ということがわかると思います。

私の手元にある宅建業法の基本テキストは、Ａ５判で本文約２４０ページのもので、おそらく平均的な分量です。

このテキストにはちゃんと問題を解くための知識が載っている、ということです。

もちろん、本試験の現場の緊張の中で知識を動員できるかどうかの問題はあるでしょう。

しかし、だからこそ、基本テキストに書かれている知識を、どういう環境下でも正確に引き出せる力、というものが求められているのであり、これは徹底的にやらなければならない。また、逆に言えば、それ以上の力は不必要だと言えるのではないでしょうか。

今回も一問だけの例で申し訳ありませんが、必要とされている知識は基本テキストで十分、過去問を潰せばバッチリ、ということは少し感じて頂けたのではないでしょうか。

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